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山の木々も芽吹き、桜の便りが足早に北上し、砂浜で散歩している人、 浜辺ではサーフィンを楽しむ人、その沖の青い海原を悠々とフェリーや貨物船、 漁船などが航行しているのが見えます。

ところで皆さんは船というものは水に浮いて当たり前と思っていませんか? 昔話の「カチカチ山」でウサギがたぬきに造ったドロの船があります。 ドロは水に溶け沈んでしまいました。しかし、もしドロが溶けなければ沈む事はなかったでしょう。 この様に船体形成するものには色々な物があります。 現在主に鉄、アルミ、木、プラスチック等の材料が使われています。 木船はその材料の通り水に浮く木材でできています。ですから浮くのが当然のように思われます。 しかし、綱船の鉄は水より重いのになぜ浮くのでしょう。 簡単に浮く原理を説明しますと物体にはその形の如何により容積があります。 その容積と重との関係で、その物体を流体中に浸すとそれが排除した流体の重さに等しいだけの 浮力を受けバランスして浮く事になります。 この様にして船体を形成している材料に関係なく船を浮かす事ができます。 その船を安定させて浮かせたり、走らせたりの為には専門的な要素を求められます。 先ず安定して浮かせるには、全体の重さの中心を下の方にするようにします。 この重さの中心を重心の高さと言って、重心を低くすると言います。 また、走らせる為には、水の抵抗を受けるので先が尖った方が水の抵抗が少ないのは皆さんも判ると思います。 その船を速く走らせるためには次の要素を求められます。 先ず軽い事、長い事、エンジン付きの場合は出力が大きい事です。 又、船にはその使用目的により人を大勢のせる為の客船、荷物をたくさん載せる貨物船、 魚を獲る漁船等色々な使用にあわせた船があります。

前置きが長くなりましたが、私は船を造る会社に勤めています。 主に漁船を建造しており、使っている材質はプラスチックです。 このプラスチックでは業界ではFRPと言い、 F:Fiberglass(ファイバーグラス・ガラス繊維) R:Reinforced(リーンホースド・強くした) P:Plastics(プラスチック・合成樹脂)の頭文字F・R・Pを組み合わせたもので、 日本訳は強化プラスチックと言っております。 皆さんのまわりの釣り竿、ヘルメットなどにこのFRPが使われています。 この材料の利点として、軽くて強く複雑な形でも型さえ出来れば同じ形の船が何隻も出来る事です。 このFRPの主材は、マイクログラスというガラスを細い繊維(10〜13ミクロン)にし、 その繊維を束ねた物をストランドと言います。そのストランドを長さ50mmにして 無定方向に均一な厚みに積み重ねて、結合材を用いてマット上に形成した物を チョップストランドマットといい、ロービングを布状に織った物をロービングクロスと言います。 これらを型の内側に広げ、硬化剤を混ぜた不飽和ポリエステル樹脂を塗布し固めて製作します。 固まったら型から剥がし各種のパーツを同様な方法で作り、そのパーツを組み立てて一隻の船を作り上げます。 (大きなプラモデルのような物と思って下さい。)

私は、この船造りを仕事にし、材料から一隻の船を完成させ、 進水、試運転と全般に関わり物作りの楽しさを毎回味わっており幸せに思いながら仕事をしております。 「いやいやする仕事は苦痛になる、進んでやる仕事は喜びになる」を信条にしています。 これから暖かい季節になり、海辺にドライブや釣りに出かける事があると思います。 その折りに小さな船の殆どがこのFRPで出来ていますので、ちょっと注意して見て下さい。

(2004.春 記)


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